大人的恋愛事情
後ろから聞こえる低い声はいつもより少し掠れ、それでいて心地いい。
起きられたので、添えていた手を引っ込めようとすると、強く握られて叶わない。
「可愛いこともするんだな」
少し笑う声には、優しい響きが見えて、さすがに今この状況で意地を張る必要もないので素直に答える。
「まあね」
私が触れていたお腹にある腕が、反転して今度は私の腕を撫でるこの状況は、まるで恋人同士の甘い時間。
まあ、別に悪くないと思い、されるままにする。
警報を無視するわけでもなく、この時間はこの時間だと割り切ろうと考える自分に、さすがに大人になったのだと変なことを思った。