大人的恋愛事情
 
「そうだね」



「なんで?」



「……もう捨てられたくないから」



それは曝け出す私の本音。



優しく腕を撫でる手が心地よくて、思わず本音を出したことに少し後悔する。



それなのに、背中の藤井祥悟がなんの反応も示さず、同じように腕を優しく撫でるので、後悔も薄れ穏やかな気分を保ててホッとした。



そうなるとなったで言わなくてもいいのに、溜まっている胸の内が口を突いて出たりなんかして。



「圭はああ見えて、意外に冷たい男なの」



「そうなのか? 見えねえな」



「そうみんなそれに騙される。4年も付き合ったのに、簡単に捨てられた。あのショックはなかなか忘れられなくて……」
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