大人的恋愛事情
「なに言ってんの、そんなことできるわけないじゃない」
呆れて返す私の、カウンターテーブルに置かれた手を取り、それを軽く握る。
「どうしてだ?」
「他人だからよっ」
思わずその優しい大きな手から、自分の手を引き抜く。
「また可愛くねえな」
先ほどのベッドでのことを言われているのだと思うと、少し恥ずかしい気分になる。
てか、恥ずかしいって……。
「明日の夜には村岡も帰るだろ」
「まあ、会社あるしね」
さすがに私の家から会社に行くことはないだろうし。
「明日の夜にでも替えてやるよ。それまではここにいてもいい」
穏やかに優しく言われて、思わず隣の男を見た。