大人的恋愛事情
「いくらなんでも、そこまでは悪いから……」
明日まで私を泊めて、圭がいなくなるのを待ち、私の家の鍵を替えることに付き合わすなんてさすがに悪い気がしてそう言うと、雑炊を食べる男が少し笑った。
「見返りは昨日のあれで十分だから、気にするな」
あれとはまさにあれで、目の前のキッチンが視界に入り昨日の事を思い出した。
初めは強要されたとはいえ、最後にはそうでもなくなっていたことも思い出す。
今さら言い訳するつもりもないので、その言葉には乗らずに黙っていると。
「それに……」
そう言った藤井祥悟の声は、呟くような困ったような声に聞こえて。
それに?
「一刻も早く替えて欲しいからな」
そんなことを言う藤井祥悟に、また胸の奥がジワリと温かくなった。