大人的恋愛事情
 
家に帰ったほうが、圭がいたとしてもその方がいいのかも。



社内一モテる男か、その男と一、二を争う男か……どちらがましか。



突然不安に駆られ、思わず顔を上げると藤井祥悟がまだ私を見ていて。



「村岡のことは好きなのか?」



痛いところを突いてくる男の瞳を見つめながら、どう返すか考える。



好きとか嫌いの次元ではない気が……。



それでも簡単に流されそうになるのも事実で、現実にこうして圭から逃げていたりして。



答えを返さない私を見ていた藤井祥悟が溜息を吐いて、先に視線を外した。



「もういいか?」



「え?」



「これ」



「ああ、うん。置いといて、後は焼くだけだから私がする」
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