大人的恋愛事情
また嫌な予感を察知しても、電話に出ないわけにもいかずに、自分のデスクに座り一呼吸して受話器を上げ二番のボタンを押した。
「お電話代わりました、佐野です」
『やっと声聞けた……』
それはホッとしたような圭の声で、胸がチクリと痛むのは気のせいだと思いたい。
『繭?』
「なに?」
『話がしたい』
「私はしたくな……」
『そんなに避けるなよ』
いつもより掠れる声は、何故か少し低い。
怒っているのだろうか?
てか、怒っていてもどうでも私に関係ないわけで。