大人的恋愛事情
 
『昼、正面玄関で……』



「行かない」



『繭、そう言うなよ。昼飯食うくらいいいだろ?』



少し甘えるような言い方で、困ったような声を出す圭に思わず受話器を電話に戻した。



あの声を出されると、本当に弱い私の自己防衛は、電話を切るくらしか出来なかったりして。



そんな自分が情けなくもあり……。



「誰ですか?」



ふと隣を見ると制服に着替えた美貴ちゃんが、少し困ったような顔で私を見ていて。



「別に」



「もしかして村岡さん?」



その言葉に溜息を吐きながら返さないでいると、美貴ちゃんが椅子に座りながら呟く。



「なんか可哀想……」
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