大人的恋愛事情
 
「まあ、藤井さんも捨てがたいですけど、やっぱり村岡さんのあの声は高評価なんですよね」



声って……。



それだけのことで。



いよいよ呆れて、溜息を吐く私に、何気ない様子で要領よく仕事を押し付ける後輩が笑って呟いた。



「私、声フェチなんです」



どうでもいいことを呑気に言う美貴ちゃんから手渡される、領収書をデスクに広げながら、耳元に落ちる藤井祥悟の低いのに優しい声を思い出していた。




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