大人的恋愛事情
「今日は営業先から直帰してきた」
軽く返してくる圭の声はいつもより少し低い。
立ち上がろうともせずに私を見上げている圭。
「退いてよ、部屋入れない」
「入れてくれよ」
「嫌」
アッサリとそう言う私から、少し笑って視線を外し俯く。
マンションの廊下の薄暗い蛍光灯が、圭の顔に影を作る。
「繭……悪かったよ。頼むから許してくれよ」
いつもより低い声がさらに掠れていて、少し辛そうに聞こえなくもない。
だからって、許せるものでもないし。