大人的恋愛事情
「ちょっと、もう少し離れてよ」
諦めた気分で、せめてもの抵抗を口にすると熱のある男が微かに笑って抱き寄せる。
仰向けに寝る私を横から抱きしめる圭。
「本気でやめて」
そう言いながら背中を向けると、片方の腕が私のお腹に回った。
これで腕枕でもされていたら、まさしく藤井祥悟と迎えたあの穏やかな朝と同じだったりして。
電気の消えた薄暗い室内で、圭が後ろから首辺りに顔を埋めるようにしながら呟いた。
「繭……」
「……」
「繭?」
「……」
「ま……」
「なに?」