大人的恋愛事情
 
少しきつい口調で聞き返すと、圭の熱い吐息が首にかかった。



「結婚しよう」



薄暗い部屋。



いつも一人で寝ているベッド。



見慣れた寝室の光景が、カーテンの隙間から入る月明かりに浮かぶ。



一年前にはこうしてよく一緒に眠った圭。



ほとんど毎日どちらかの家で、夜を一緒に過ごしていた圭。



引越しすればよかった……。



そうは簡単に言っても、現実はそんな金銭的な余裕もあまりなく。



圭との将来しか見ていなかった私は、別れたからといって急にどうすればいいのかもわからなくて。
< 336 / 630 >

この作品をシェア

pagetop