大人的恋愛事情
 
ただなんとなく、圭だけがいなくなった日常を過ごしていただけ。



そばを作ることがなくなっただけ。



夜はテレビを見る時間が増えただけ。



休日は出掛けなくなり、家でのんびり過ごすようになっただけ。



年に一度か二度の旅行は詩織と行くようになっただけ。



そんな時間を過ごしてはいても、どこかで前向きでもなかった気がしていて。



『結婚を考える相手は、圭だけだったんじゃないの?』



詩織の言った通り、他の誰かとの結婚なんて想像も出来なかったし、してもいなかった。



「いつでもいい、繭がしたいならすぐにでも……」



「もうやめて、そんな話しするならソファで寝る」



そう言って起き上がろうとする私を、抱きしめて引き止める。
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