大人的恋愛事情
29歳大人の男に、声を聞きたいなんて言われて嬉しくないわけがない。
違う……。
大人は関係ない。
きっと藤井祥悟だから嬉しかったりしているのに。
低く優しい声も、色気ある雰囲気も、包みこんでくれるような穏やかな性格も、時々見せる嫉妬心も、ストレートな言葉も、全部藤井祥悟だからだと思うのに。
それなのに、圭を振り切れない自分もいたりして。
まったく違う意味で、違うところで、違う感情で、どちらの男も私の中へと入って来る。
それを追い出せずにいる私は、いったいどうしたいのか。
「どうした?」
穏やかな声で聞いてくる男に視線を向ける。
「なにが?」