大人的恋愛事情
「……お電話代わりました」
『話がしたい』
いつもより何倍も低い声に、思わず怯む。
どこまでも不機嫌そうな藤井祥悟の声に、言い訳ができるはずもない私は、どう返せばいいのかもわからない。
『正面か裏、どっちがいいんだ?』
投げやりにそんなことを言われて、どう答えるか一瞬考えていると、さらに不機嫌な男が言い放つ。
『それとも家に……』
「どうして家なのよっ」
思わずそんな言葉を出した私は、次の瞬間後悔することになった。
『村岡にバレない方がいいんじゃねえのか?』
それはとても嫌味な言い方に聞こえて、事実嫌味なのだと思う。