大人的恋愛事情
「どうしたの?」
私のロッカーを覗く美貴ちゃんにつられて、詩織も覗いてくる。
「ちょっと、なんでもない……」
「バレンタインのチョコじゃないですか?」
「え、繭が?」
「そうみたいですね」
「誰に?」
軽く聞く詩織に美貴ちゃんが首を傾げ、二人がロッカーの中の紙袋から視線を私に向けた。
どう考えても言い逃れができない状況に開き直った気分で口を開く。
「そうよ、チョコよ。藤井さんにあげようと思ってるの。圭のプロポーズももう断ったし、これからは藤井さんに私を見てもらえるように、頑張ろうと思ってるの。いい歳してとも思ってるけど、好きなんだからしょうがないのよ。……以上終わり」