大人的恋愛事情
未来
パーフェクトでもなかった、氷室室長に見送られるように電話を切って、総務を出ると各階からの痛いほどの視線が私に注がれていた。
さすがに恥ずかしいとも思いながらも、だからといってこの瞬間を逃すと、藤井祥悟は手に入らない。
仕方なくそんな視線を無視してエレベーターに乗り込む。
「おぉ、佐野。おめでとう」
「残念ですよ、佐野さんが結婚とか。俺、結構マジで好きだったんだけどな」
「まあでも、相手が藤井じゃ、諦めるしかないな」
「企画のホープだけありますよね。あのプレゼン能力はさすがですよ」
なんて軽く声を掛けて来るお昼に向かう男性社員達。
曖昧な笑顔でそれに返していると、一人が呟くように言い出す。