大人的恋愛事情
 
たった一カ月ほど前に知り合ったはずの男は、今や私のすべてを支配する。



心も身体もすべてが、藤井祥悟が与えるものに反応して揺さぶられる。



「繭?」



いよいよ限界にくる私は、その呼びかけに返すことも出来ずに、その時を待っているというのに。



「悪い……俺も限界かも」



そんな言葉を呟きながら、突然離される指先に言いようのない切なさが込み上げた。



「やぁ……」



やめないでよ……、もっと……、もう少しだったのに……。



いきなり突き放された、身体が満たされない熱で小刻みに震える。



疼く熱が身体を駆け巡り、私から離れようとする男に思わず縋るように抱きついた。



「やめないでよ……」



掠れる声で切なげにそう言うと、そんな私を見た藤井祥悟が困ったように笑いながら、それをベッドの上の小さな棚から取り出す。
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