crocus
痛みすら感じなくっていく中、フィルターを通したように声が聞こえる。
(ひひっ、なぁ腹…思いっきり踏んだらどんな声出すのかねぇ)
(おい、下衆いことするな。獲物さえあればいいんだ)
(まぁ…見てなって。せー、んのぉ!!?…)
体の揺れが止まった。狭い視界でぼやけた光景だったけれど、見上げた先にはニヤけながらもキレてる兄貴がいた。
「しゅ、う…」
「おい琢磨、俺のマンガにポテチの油ついてたぞ。どういうことだい?コノ野郎っ!」
「あぁ、あれ…鶏の油」
「まさかのティキン!!」
あぁ、やべ…兄貴がアホすぎて、気…手放しそう…
瞼が重くなって何も映さなくなった。ただでさえ腫れてるらしく、もう開けられそうもなかった。
(さーて…俺のかわいい弟になにやってくれてんのかなぁ?)
(うへぇ…し、周さん…)
(こいつ、周さん、の弟!?)
(よし、鬼ごっこなっ。俺、鬼。お前ら、逃げろ。10秒後…周兄ちゃん追いかけるよー!)