crocus
目を開けると、そこには見慣れた天井があった。
体のあらゆる部分がジンジンと点滅するように鈍く轟く。それが痛みだと理解するのは、すぐだった。
「あーえっと…」
なんでここにいるんだっけ、と思い浮かんだ記憶を繋げる作業をぼんやり頭の中でしてみる。
『健太』と『マキオ』に行き着いたと同時に、目をギンギンに見開き、ガバッと跳ね起きた。
「学校がある日もそうやってシャキーンって起きれば、俺のエルボー受けなくていいのにな」
週刊少年雑誌に視線を向けたまま、あっけらかんとぼやいたのは周兄ちゃんだ。
「周兄。健太とマキオは?あれからどうなった?」
未だに本に視線は向いたままだけど、読んでいるわけでもなさそうで、言葉を選んでいるように思えた。
「…マキオは、ほれ、そこ」
周兄ちゃんは開けっぱなしの窓の方へ顎をくっと動かした。
そこには緑色のカゴに入った、渋い光沢を放ち、相変わらず凛々しく佇むマキオがいた。
マキオが入っているカゴは家の物ではなくて、昼間に見た健太が入れたカゴに似ていた。
「それで健太は…?」
マキオがいるベランダへと歩みを進めながら、周兄ちゃんに質問した。
横目に、周兄ちゃんが回転イスの力を借りてこちらを向くのが見えた。