crocus

思えば初めて健太の立場になって考える気がする。

あの雷の日から恐くてずっと考えないようにしてきたこと。

もし俺が健太だったら…、そうするとなんとも簡単にいくつもの予想が浮かんでくる。

わざと傷つけるようなことを言ったのは、何かそうせざるを得ない状況だったのかも。

転校のことを言い出せなかったのは、単純に寂しかったから、街から離れがたかったから、ずっと一緒にいたかったからかな…。

想像でしかないけれど容易に汲み取れてしまった健太の心境。でも他人がそれを肯定してしまえる程の時間を一緒に過ごしてきた、自信があった。

今になってやっと行き着いた思い。

あの日…本当に辛かったのは、健太かもしれない。

「これ以上関わらないで」なんて、わざと遠ざけるためだなんて、すぐ分かるじゃねぇか。

大嫌いって言ったあと…本当にそうならあんな苦しそうな顔しねぇよな…。

初めて向かい合った過去はなんとも苦々しくて波に飲まれそうになる。

結局、俺は自分のことばっかりで、傷つくのが恐くて逃げたんだ。

なにが親友だ、バカ野郎…


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