crocus

「ふーん……。僕、琢磨がヘッドホンもしないで寝てるの初めて見た」

声が聞こえてきた方向を見れば、橘さんが扉の淵にもたれかかっていた。その隣には桐谷さんもいる。

「ボクもー。よっぽど若葉ちゃんの隣が心地よかったんだね?」

ニッコリ優しく笑って誠吾くんがこちらを見た。慌ててそんなことないと否定しようとし、驚いたはずみで琢磨くんの頭がズルリと落ちてしまった。

ぽすんと頭が乗ったのは、若葉の太ももの上。

一同の目はそこに釘付け。若葉も、さすがに恥ずかしくなって縮こまる。

「たーくーまぁぁぁぁ……!!!」

どすの効いた低い声にぱっと顔を上げれば、ものすごい剣幕のオーナーさんがズンズンと部屋に入ってきた。その代わりに、何故か誠吾くんが部屋を出て行ていく。

「シャーシャー」と奇声を放つオーナーさんがなんだか恐くて、近くの恭平さんに助けを目で求めてみた。

けれど恭平さんも「フシュー、フシュー」と息を巻いて、琢磨くんに詰め寄っていた。

チンピラさんのようにポケットに手を入れる2人は、眉間に皺を寄せてギラリと動く目玉から暴言を撒き散らしていた。


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