crocus
「すごくおいしいです!初めて飲んだときと同じように、変わらずに記憶に残りそうなくらい」
「最高の褒め言葉、恐悦至極に存じます。…あっ、そだ!」
恭平さんは冗談っぽく畏まった素振りをしたあと、何か閃いたようにポンと拳で手のひらを叩いた。
「若葉ちゃんさ……明日の朝、一緒にコーヒー豆買いに行くの手伝ってくんねぇ?」
「あ、はい!もちろんです」
即答すれば、恭平さんは拳からグッと親指を突き出した。
「じゃあ、決まりな!…って、なぁに、見てんだ、よっ!にや、にや、してんじゃ、ねぇっつの!」
からかいの眼差しに気づいた恭平さんは、誠吾くん、琢磨くん、オーナーさんの頭を順に布巾でぺしぺし叩いて怒り出した。
そんな騒がしい様子を気にすることなくコーヒーを楽しむ桐谷さんと、口論している最中にしれーっと琢磨くんのコーヒーに砂糖を大量に入れる橘さんがいた。
琢磨くんがソレを口に含んだ瞬間、霧吹きのように吹き出したのは言うまでもなく、それを見て申し訳なくも声に出して笑ってしまった。