crocus
「あ!ありました、ありました!……『珈琲の木』!」
「おー!最短10分!ありがとな」
わしゃわしゃと髪を撫でて褒められた。
髪が乱れてしまったけれど、新しい豆に出会えることが嬉しいらしく、わくわくしている恭平さんを見れば一緒に笑うしかなかった。
駐車場に止め、車から降りれば、まだお店は開店している様子はなくて不思議に思った。
「まだ開店してないみたいですね…」
「あ?おー、ここの開店は12時だよ」
「え?それじゃあ…待ってたらクロッカスの開店に間に合いませんよね?」
「のんのーん。『待ってたら』大遅刻だけど、…こっち」
恭平さんは手招きをすると、お店の扉ではなくて店の横へ周ってずんずんと奥へ歩いていく。若葉は慌てて砂利道をザクザクと踏みしめて追いかけた。
恭平さんは『関係者入り口』と張り紙がされている扉の前に立ち止まり慣れたようにコンコンとノックした。
若葉がドキドキしながら待っていると、しばらくして扉が開いた。
中から現れたのは、馬だった。
「きゃあああああっ!?」