crocus
「若葉ちゃん!おっまたー!始めようか」
びくっとしながら後ろを振り返れば、扉の縁の上に伸ばした両手をかけて伸びをする恭平さんがいた。恭平さんの背後から差す陽の逆光で、その表情はあまり見えない。
「はい!よろしくお願いします」
「おぅ!パッパーっと終わらして帰ろうな」
恭平さんは腕まくりをしながらツカツカと冷蔵庫に歩み寄りドアを開いた。
中を覗くと、透明でガラス製のキャニスターが綺麗に並べられている。大・中・小とサイズはいろいろで、ガラス面に焙煎日時が書かれたラベルが貼り付けてあった。
「あ、やっべ。忘れちった。…ごめん、若葉ちゃん。ワゴンからキャニスターを入れるクーラーボックス持って来てくんねーかな?俺、豆の状態チェックしておくから」
「分かりました!」
「わりーね」
若葉を見て両手を合わせて申し訳なさそうにウインクをした恭平さん。そして目を輝かせながら一つのキャニスターを手にとった。
急いで外に出て、近くに停めてあるワゴンのトランクを開ければ2つのクーラーボックスが置いてあった。