crocus

両肩にショルダーベルトを掛けると、横幅だけなら若葉5人分にもなった。けれど効率良く運ぶためには2つ同時がいいだろうと、カニ歩きを開始した。

「湿度、温度、光、酸素、湿度、温度…」

長谷川さんが苦労して焙煎したコーヒー豆が台無しになってはいけない。素人がこんな場所に入れるなんてなかなかない。

若葉は迷惑かけるまいと、長谷川さんに教えてもらった気をつけることを繰り返し唱えた。

「持ってきましたー!」

入り口から冷蔵庫の前に立つ恭平さんに声を掛けた。

「おっ!サンキュー」

恭平さんは、軽くキャニスターを掲げてを振った。

狭い入り口なので先に左側のクーラーボックスを通して、次に体を室内に入れた。

そして、右側のクーラーボックスを入れようとすれば、扉に激しく当たってしまった。するとその衝撃で扉がパタンと閉まる。

そうなれば意外なことに、倉庫内は真っ暗になってしまった。これもコーヒー豆を守るための構造なのかもしれない。

「ごめんなさい!今、開けますね」

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