crocus
差し込む光の眩しさで上手く開かないない目。
なんとか長谷川さんの声がした方を見れば、今の自分の位置と扉の距離に違和感を覚えた。
暗闇では幅も奥行きも広大無辺のブラックホールのように思えたのに、入り口はほんの数メートル先にあった。
「はぁはぁ、はぁっ…はぁ…あえっ?なんで?…若葉ちゃ…、俺…、また…はぁ…」
話している途中で冷蔵庫に預けていた恭平さんの身体がズルリと落ち、若葉は床につく寸前で恭平さんを支えた。
恭平さんは体にシャツを張り付かせるほど、汗をかいていた。
知っているいつもの恭平さんに戻ってくれたことに安堵して、若葉の全身の力もヘナヘナと抜けた。