crocus
慌てて体を起こし返事をすると、しゅんとした『きょうへい』さんがそろりと顔だけを覗かせた。
「若葉ちゃん、今日はホンットにごめん!濡れた服は乾燥機にかけたから明日には乾くと思う、です……」
「私の方こそすみません。夜遅くに何から何まで……」
『きょうへい』さんと目が合うと、どちらからともなく眉を下げたまま小さく笑い合った。
「まぁ……落ち着かない部屋だけど、ゆっくり休んで?」
「落ちつかない部屋でごめんね~」
ひょっこりと現れた上矢さんは『きょうへい』さんの背中にのしかかると、恨みがましく言った。
「ちょっ!重っ!」
「若葉ちゃーん、僕のコレクションすごいでしょー!」
『きょうへい』さんを無視して誇らしく話す上矢さんに対して、若葉も同じく目を見開いて答えた。
「はい!おもちゃ屋さんみたいでワクワクします!」
ハッと固まった上矢さんは、目の前の『きょうへい』さんをスパーーンと両手で横へ押しやり、涙目になりながら若葉の両手をぎゅっと握った。
「天使!」
驚く若葉が硬直していると、上矢さんの首に『きょうへい』さんの腕が巻きつく。
「っんの!変態!ほらっ、もう行くぞ!」
そのままズルズルと引きずられてもなお、幸せそうに微笑む上矢さんを見ているとクスクスと笑えきてしまった。
若葉の笑い声に『きょうへい』さんは安堵したように目を細めたと思えば、目をパッと大きく開いた。