crocus
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若葉の左肩の痣はだいぶ薄くなり痛みはほとんど感じられなくなっていた。それと相反して、キリキリと痛み続けるのは心。
若葉は慌しく店員さん達が開店の準備をしている中、モップで店内を掃除していた。
「ぴら~ん!」
「きゃ!」
不意を突かれて、メイド服のスカートを軽くめくられ、若葉は小さな悲鳴をあげて飛び上がった。
ドキドキする胸を左手、スカートを右手で押さえながら後ろを振り向けば、誠吾くんが悪気が全く伺えない、屈託のない笑顔で若葉を見ていた。
「ばぁーか!お前、なにしてんだよ!」
テーブルを拭いていた琢磨くんがズンズンと歩み寄って、誠吾くんのほっぺたをびよーんと引っ張った。
「いふぁいー!わっふぇ……ふぁふふぁふぁ」
「何言ってるか、全然っ!わかんねぇ……」