crocus
そっと琢磨くんがほっぺたを開放すると、その場所をスリスリと慰めながら誠吾くんが涙目で言い直した。
「……だって、琢磨が『若葉が心配だから、元気づけてこむっふぉふふぉふふぐ!」
「何言ってるか、全然っ!わかんねぇよオイ!何語なのかすらわかんねぇよオイ!」
今度は口を塞がれた誠吾くん。そんな彼の背後を取っている琢磨くんは、殺意が隠れた笑顔をしている。……ほんのり頬を染めて。
そんな2人を見ていれば「ぷっ」と噴出さずにはいられなかった。メラメラといがみ合っていた2人の視線は、同時に若葉を見た。
「ふふっ、ごめんなさい。ホント仲のいい双子さんみたいだなって」
本当にそういう理由もあった。
けれど一番は元気付けようとしてくれた……その想いが嬉しい。
心のつっかえが取れた弾みで、呼気混じりの笑みが零れてしまったのだ。
「……ボクの方が、年上だよー?」
「たった一歳だろ」
「♪たった1歳、されど1歳~。立ったハイジ、ファレド1世~」
「誰だよ!ファレド1世って!」
「わぁーん!こわーい!助けてぇ!若葉ちゃーん」
誠吾くんはひーんと泣きべそをかきながら、ぎゅっと抱きついてきた。若葉の肩に頭を乗せてスンスン嘆いている。
誠吾くんが仔犬そのものに見えて、思わずよしよしと頭を撫でて慰めた。
琢磨くんはぼそっと床に向かって何か呟いたようだった。
「(……うらやましくねぇからー……全然うらやましくねぇからー……)」