crocus
一杯のエスプレッソ
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一日中部屋に篭り、ベッドに寝そべっていれば恭平の頭には卑屈な考えばかりが浮かぶ。
24歳にもなって自棄を起こして休んでしまった。下ではみんなが抜けた穴をフォローしてくれていてフル回転なんだろう。
今更、降りて行っても迷惑をかけるだけ。それに要の言ってることは正論だっていうことも、恭平のためだということも痛いほど分かっている。
…だからこそ自分自身にがっかりして、当り散らしてしまった。挙句の果てに心配してくれた若葉ちゃんにまで怒鳴ってしまう始末。
もうみんな失望したかもしれない。
俺のせいで円滑で均等の取れたチームワークを壊してしまったかもしれない。
コーヒーのことに関しては、誰にも負けない情熱を注いでいる自信があったのに。でも……そんな自信、いつから手にしたつもりでいたんだろう。
どうしてバリスタになろうと思ったんだっけ。
どうしてコーヒーが好きになったんだっけ。
「はぁ…」
恭平はため息をつきながら体を起こした。
これ以上、負の連鎖が続けば確立したはずのアイデンティティすら否定してしまいそうで恐くなったのだ。