crocus
怯えさせただろう。
こんな男が近くにいれば恐いに違いない。
そう思えば、若葉に近づくこと、容易く触れることを極力避けるようになった。
それより何より……自分自身の内に潜む魔物が恐かった。きっと触れるだけで傷つけて、キャニスターのように一瞬で壊してしまう気がして。
いつか制御出来なくなって、大切な人を傷つけて、裏切るかもしれない。
ここの連中が大好きで、感謝し尽くせないお客さんがいて、クロッカスの居心地がよくて……大事なものがどんどん増えていく。
自分を形成しているそれらが向けてくれる信頼を、失うことが恐くて臆病になる。
そんな考えが頭に張り付いて離れずに、仕事中も全く集中出来なかった。
完全に悪循環。
自分で自分の首を絞めていた。
恭平は再び寝転がると瞳を閉じた。
今は心を休めよう。
そして明日には元気になって、あいつらに、若葉ちゃんに謝ろう。
……もうあの時みたいな思いはしたくないから。