crocus
用具室のカギは鍵穴に差したまま、ガラガラと扉をスライドさせて開いた。
まずは簡単な作業から。
ライン引きを綺麗に並べて立て掛けていく。そして、コーン、ゼッケンの入ったケースも元の場所へ。
もたもたしていると次第に薄暗くなる部屋。カラカラカラと軽い音を立てて、扉は勝手に閉まる仕組みになっていた。
そんな扉を体で押さえながら、ボールが入った重たいカゴを引き入れる。この作業だけは誰かに残ってもらうんだったと少し後悔する。
かと言って、哲平に負けず劣らず自分も十分ヘタレで、調子に乗りやすい。一度引き受けたことを、「やっぱり…」と言い出す勇気も、撤回するタイミングも図れないので、結局は負けた時点で1人は確定だった。