crocus

◇◆◇◆◇◆

結局、恭平が発見されたのは、陽が登り始める早朝だった。いつの間にか眠っていた恭平は慌てて目を覚まし、そして愕然とした。

朝焼けが明るみにしたのはボールやコーン、石灰の粉が散乱した室内と、奇怪な目で見下ろしている大人達と、泣いている両親の姿だった。

…負けてしまった。

俺は自分で自分を制御できない危険な存在なんだ。

ごめん、父さん母さん。いい子じゃなくて、ごめん。

いつか心も体もアノ声に囚われて、この室内の状況が示すように、誰かを傷つけるようになるに違いない。

俺は、この胸の内に渦巻く声を飼い慣らせないんだ。
知られませんように。気づかれませんように。バレませんように。

意味のない祈りだと分かっている。誰にも一生悟られなかったとしても、誰よりも自分が一番知っていて、失望と恐怖を絶え間なく注いでいるんだから。

きっと指名手配の犯人はこんな気分なんだろう。




< 180 / 499 >

この作品をシェア

pagetop