crocus
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結局、恭平が発見されたのは、陽が登り始める早朝だった。いつの間にか眠っていた恭平は慌てて目を覚まし、そして愕然とした。
朝焼けが明るみにしたのはボールやコーン、石灰の粉が散乱した室内と、奇怪な目で見下ろしている大人達と、泣いている両親の姿だった。
…負けてしまった。
俺は自分で自分を制御できない危険な存在なんだ。
ごめん、父さん母さん。いい子じゃなくて、ごめん。
いつか心も体もアノ声に囚われて、この室内の状況が示すように、誰かを傷つけるようになるに違いない。
俺は、この胸の内に渦巻く声を飼い慣らせないんだ。
知られませんように。気づかれませんように。バレませんように。
意味のない祈りだと分かっている。誰にも一生悟られなかったとしても、誰よりも自分が一番知っていて、失望と恐怖を絶え間なく注いでいるんだから。
きっと指名手配の犯人はこんな気分なんだろう。