crocus

その日から、周りの目を気にするあまりに、余計に騒がしいお調子者になっていったように思う。

中学生になっても、それは衰えることはなかった。まさに客寄せパンダ、道化師だと、幽体離脱したように斜め上から俯瞰で眺めている、もう1人の恭平がいた。

そして、変わらなかったのは哲平の母さんの容態もだった。

入退院の繰り返しで、体も大分やつれていたけれど、哲平の母さんの明るい笑顔だけは絶えることがなかった。

それが糧となっていたのか、哲平は学校と家事と看病で忙しくしているのにも関わらず、疲れた顔なんて一切見せなかった。部活のサッカーをしている時も常に全力で、辛い境遇すら力に変えるプレーで周囲を魅了していた。

そんな哲平が眩しくて、誰よりかっこよくて、自慢の親友だと思っていた。

あの時以来、心の内の澱んだ声は2度と聞こえなくなって、暗闇が見せた幻だったと思えるようになっていた。

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