crocus
前回よりもひどい吐き気と、震えに襲われて、グラグラ回るただの暗い世界は現実なのか夢なのかさえ分からなくなってくる。
楽にならないかと上を見上げると、室内の天井の斜め上にある染みが何かの顔に見えてきて、それが囁く。
(はっきり言えばいい、哲平を恨んでいると)
(卑怯者の事情なんてどうでもいい)
(人は裏切るんだ。誰も信じちゃいけない)
どうしてだろう。今回はその声に抗おうとする意思が、脳の片隅に追いやられていた。
体と心が一致して、すんなり納得してしまった。心中は、恨み辛みの醜い言葉が湧き出た。歯を食いしばっていないと、またしても制御出来ないほど暴発してしまいそうだった。
この時に分かったのは、恭平にとって暗闇は、心の中に蓄積していた鬱憤を具現化させるスイッチだということ。
そして、やっぱりそんな自分に萎縮震慄して、嫌悪感を強く抱いた。許容範囲の少ない弱い自分に自信なんて持てるはずもなかった。
心はどこにあるのだろう。
修理はどこに出せばいいのだろう。