crocus
俺にとって、やっぱり哲平は…
「綺麗な景色だったり、美味しいご飯を見つけた時に共有したいなーって思い浮かべる人は、自分にとって、とても大切な人だったりしますよね」
そう言うと、ほんわり微笑んだ若葉ちゃんは、未だに夜空を見つめたまま。
恭平はハッとして、心を読まれたのではと思わずにはいられなかった。出かかっていた答えを、すんなりと繋いでしまったのだから。
まさか、本当に?…と思いながら心の中で「若葉ちゃんの肩の上にカマキリが!」と心の中で思い浮かべてみた。
……はーい、無反応!
若葉ちゃんの特殊能力ではなく偶然の一致だったことにホッとするも、今の流れに何か引っかかる。
「はあぁぁ…!若葉ちゃん、肩…そう肩!」
「へ?」
「肩…、今もやっぱ痛ぇ…よな?」
若葉ちゃんは「あぁ!」と言いながら、ポンッと手のひらを拳で叩いた。そして、ブンブンと首を振ってヘラーっと笑った。
「もうすっかり治りましたよ?ほら!全然痛くないです」
左腕をグルグルと元気に回して、完治したことを表現してくれた。それでも、あの日の痣の色は、現役でサッカーをしていた時ですらなったことがない。骨にヒビだって入っていてもおかしくはないほどの濃い紫色だった。
思い出すだけで、罪悪感に苛まれる。自分っていう人間の最低さを、痛感する。