crocus
「若葉ちゃん…、誠吾を見つけたら、ジャブ!ジャブ!ストレートな!」
若葉の右肩にポンっと手を置いて、真剣な表情で恭平さんが言うと、琢磨くんも真面目な表情で左肩に手を置いて、ピースをした。
「かーらーのー、目潰し!目潰し!なっ!」
「は、はい…。と、とにかく行ってきます!」
なんだか桐谷さんまで何か言おうとしていました。
なんだか桐谷さんの指令は聞いてはいけない気がしました。
慌てて誠吾さんが曲がった通りを追う。数十メートル前にいた誠吾くんの綺麗な金髪が、いい目印になってくれていた。
近くまで駆け寄り、息を整えようとトタタと歩調を緩める。誠吾くんはポストの前で、パタパタと自分の服をなんども叩いていて、ハガキがないことに焦っているようだった。
「誠吾くん!はい、落としましたよ?」
「へ?…あ、わ、え!若葉ちゃん!拾ってくれたんだぁー…、ありがとー…!」
「いえ、いえ!どういたしまして」
誠吾くんは、ポケットから更に5、6枚のハガキを取り出して一気に投函し、パンパンと両手を合わせて祈願し始めたので、若葉も同じ様に両手を合わせた。