crocus

元に戻してあげる方法は何かないかと、雛鳥を見つめながら若葉が頭を捻っていると、誠吾くんがスッと立ち上がった。

「ちょーっと僕のフードに入っててねー」

雛鳥に優しく話しかけると、誠吾くんは腕をグルリと回して頭の後ろのフードに優しく入れた。

若葉が予想する展開に戸惑いを隠せないでいると、誠吾くんの大きくて冷たい手のひらに頭をポンッと撫でられた。

「待っててね、若葉ちゃん」

目を細めて笑う誠吾くんの綺麗な金髪が、風にふわっとなびいた。

それがとても印象的で見惚れていると、瞬く間に軽々と飛び上がり木の枝にぶら下がる誠吾くん。器用に枝から枝へと伝ってどんどんと上へ登っていく。

見上げると、眩しい木漏れ日が誠吾くんを影の塊に見せる。まるで幻像のようで、胸をいやにざわつかせた。

「もう落ちちゃだめだよー?ばいばーい」

ようやく目が少し慣れてきて、木の頂点付近で雛鳥を巣に戻している誠吾くんの笑顔が見えた。

早く戻ってきてほしいと、はやる気持ちが鼓動と息遣いまでも乱していく。ゴクリと唾を飲み込んだはずなのに、喉がカラカラのままだ。

「誠吾くーんっ!!」

自分で思うよりも切羽詰った声が出て、それは誠吾くんの耳にも届いたようだった。だけれど何故かニコニコと笑って手を振るばかりで、降りてくる様子はない。

若葉自身、木登りが出来ないからか、あんなに誠吾くんが小さく見える高さはただただ心配で仕方がない。


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