crocus

あっという間に、翔と祥の間に入って、両肩を肘置きにされることが、日常の当たり前の光景になった、ある日の給食。

「成長期だっていうのに、背が伸びないねぇ、…誠吾」

6つの机をくっつけてグループを作り、もくもくと食べていると隣から、祥が話しかけてきた。

前の席が翔、後ろの席が祥と、挟まれる形になった最悪の席替えから、数日経つ。

ポンっと右隣から、紙パックの牛乳が机の上に置かれた。

「あげる。最後に飲もうとすっごーく大切に残してたけど…、真剣に悩む友達のためだもん」

「……僕ここ最近、毎日、牛乳を支給されているんだけど…。本当は牛乳嫌いだよねぇ、右隣の人」

「嫌いなんかじゃない。ただちょっと、白黒の動物から抽出されたものを得意としないだけ」

「それを嫌いっていうの!…って、あれ?ない!」

右隣の翔を、ほんの一瞬睨んでいただけなのに、小さい食器から、唐揚げが消えていた。

犯人はわかっている。

ただ左隣の人の歯に、すり潰されている最中であろう唐揚げを見るのが、とても悔しいのでグッと堪える。

「はぁ、うまかった。あぁ、もう…、ダメだ。今すぐ寝ないと誠吾にアレしちゃう病だ。お願い、誠吾。食器片付けて?」

「早く牛乳飲めよ、そして感謝の気持ちを肩揉みで示して?」

立て続けに双子が横暴な発言をするので、誠吾の中の、機関車がポッポッー!と汽笛を鳴らした。蒸気は、頭をポンッと茹であげた。

「も~~!!無理ぃ!牛乳いらない!からあげ返して!」

悪魔の双子に取り憑かれてから、だいぶ自分のキャラが崩壊していた。

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