crocus
「翔は、数学は得意だけど歴史は苦手で、言葉はキツイけど凄く礼儀正しいよ。祥は、翔より3割増でイジワルだけど、甘えんぼで寂しがり屋だよ。あと、音痴!…ちゃんと向き合って、翔と祥を知ってよ、乾くん!」
「誠吾…」
「お前…」
名前を呼ばれ、ゆっくり翔と、祥の方へ振り返った。2人は、呆気に取られたような顔をしている。
人前で自分の意見をこんなにも連ねたのは初めてだった。動機と息切れで、顔が熱くなって、嫌でも肩は大きく上下する。
だけど…どうしても、どうしても、悔しかった。
双子だからと言って利用されるのも、翔と祥を一まとめしたような言い草も。
だから、きちんとこの2人と付き合っていけば、自然と個性が見えるはずだからと、乾くんに教えてあげたかった。
ちゃんと友達をして欲しくて、変な言葉で翔と祥を傷つけてほしくなくて、気づけば前へと飛び出していたんだ。
何か言って欲しくて翔と祥を見上げれば、2人の手が同時に伸びてきた。
頭をクシャクシャされる、そう思って少し首を引っ込めて構えていれば、予想外なことに両頬をビーっと限界まで伸ばされた。
「!?いひゃい、いひゃい!やめふぇおっ!やめふぇー!」
「てめぇ、…誰の口が悪いって?」
「おい、甘えんぼで寂しがりは、お前だろうがっ!」
「うー、ごふぇんなふぁい!はなひへー!」
ドSな双子は要望を受け入れてくれない上、引っ張ったまま、歩き出した。
「お、おい!待てよ!」
背後で怒鳴る乾くんの声に、2人で揃って立ち止まると、不気味に笑って言った。
「当たったら、協力するよ。さて俺は、翔、祥どっち?」
「…え、と…右分けだから…翔!」
「くくっ、ざーんねん、ハズレ。ま、最初から断る予定で、髪型変えてたんだけど」
「…俺らの『友達』に邪魔されたな」