crocus
そんな決意をしても、13歳の誠吾に出来ることは、デザートを作ったり、勉強したりと、あまりにも出来ることが少ない。
早く大人になりたい。
大人になりさえすれば、何でも出来ると思った。
翌日、いつも通りの時間、道を通り、何ら変わりない校門をくぐると、いつもと違った空気を感じ取った。
あちこちから好奇の視線を送られている気がした。勘違いかと思ったけれど、教室に入ったとき、室内はシーンと静まり返った。
その光景に既視感を憶える。そして、いつかの記憶が蘇る。
異質なものに対する嫌悪感、猜疑心、閉塞感が混ざる何本もの視線が突き刺さり、珍しい生き物を見にくるように、ある一定の距離を保って廊下に人が溢れた。
「上矢…、お前さ…人に触ったら、そいつに取り憑いた幽霊と話すって…マジ?」
脈を打つヵ所全てが一斉にドクドクドクと騒ぎだした。脱水をしている洗濯機を思い出す。立て続けにゴウンゴウンという騒音が繰り返されると、恐怖心を駆り立てられる。