crocus
その日以降、避けられたり、持ち物に悪戯されたりと、いじめが始まった。
他人と違うことを、どうして排除したがるんだろう。集団となると罪悪の意識が薄れて、愉快犯になっていく。
そして傍観者は、他人事のように安全な場所からモニターを通して見ているようだった。何より卑怯で、残忍な存在に思えた。
それでも、臆せず頑張ろうと思い続けられたのは、翔と祥の存在があったからだ。
助けに来てくれるからじゃない、倍返しでやり返してくれるからじゃない、ただただ…2人の変わらない態度に救われていた。
ボクが立っていていい場所がある、それだけで何にでも立ち向かえる力が湧いた。
いじめは案外早く収まってきた。中には、ごめんね、と謝ってくる人もいた。
何があったかは分からなかったけど、少し聞いた話では、なんと乾くん達も動いてくれたらしい。驚いたけど、単純に嬉しかった。
なんとか無事に1年の終業式を終え、春休みもあっという間に過ぎ去り、明日から2年生になろうとしていた。
翔と祥と時々、乾くんとも遊びながら、誠吾はあるイベントに向けて、ショートケーキを作る練習を続けていた。
そう、明日の始業式は、翔と祥の誕生日でもあった。
初めて、家族以外の人のために作るケーキ。渡したら一体どんな顔をするだろう。双子の反応を想像をするだけで、いつものケーキ作りがより、楽しかった。
材料を混ぜる手に、期待と緊張と、少しの照れが入り交じる。趣味がケーキ作りで、夢はパティシエになることは、未だに自分の内に秘めたままだったからだ。