crocus
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「それからクラスも別々になって、仲直り出来ないまま卒業したんだ…」
「そうなんだ…」
話をしている間、何度も辛い気持ちが押し寄せ、声帯がビリリと痺れた。決して上手に状況を説明なんて出来ていないと思う。
それでも、言葉に詰まるたびに柔らかい若葉ちゃんの手が、ぎゅぎゅっと強弱をつけて握ってくれた。まるで、頑張れって言ってくれてるみたいだった。
「ボクがしたことは…、人の心の中を勝手に覗いたようなものなんだって、後になって気づいたんだ」
「……だけど、お祝いしたいっていう誠吾くんの純粋な気持ちは、きっと翔さんと祥さんにも伝わってると思うよ」
「そうだといいけど…どうかな」
お父さんの想いを汲むことを言い訳にして、自分の特異な力に意味付けをしたかったのかもしれない。
それ故に、何より大切な翔と祥の傷口に軽々と触れた。傷つけて、怒らせて、信頼を無くすのも当然で、こんな最低な自分を大切にしようと思うことすら悪いことに感じていた。だけど…。
目を瞑って、今日の出来事を思い返す。