crocus
大した人間じゃないと知っていても、期待に添えられなかったのは心苦しかった。
「なぁに陰気な顔してるのよー。言ったでしょ?想定内って。いきなり再会させられたんだもん。戸惑ってるだけよ」
誠吾くんが戸惑っている中、追い詰めるようなことを言ってしまうことさえ、想定内だったのだろうか。
「再会させようとした理由って……」
「最終的には関係の修復に繋がればいいなっていうのが半分。あとは……詳しく話すよ。あいつらと一緒にね」
ちえりさんがクイッと指し示した親指の先に、双子さん達が立っていた。
「ちえり、どういうことだよ?」
「昨日、まだ会えねぇって言っただろうが!」
何も聞かされていなかったのは門倉さん達も同じだったようで、苛立ちをちえりさんにストレートにぶつけた。
ため息に近い白い息を吐き出したちえりさんは、吸い終わったタバコをポケットから出した携帯灰皿に擦り付ける。
「バカたれ共。手っ取り早く答え合わせすんのに誠吾が必要不可欠だろうが!……さ、事務所行くよ。ケンカの終わらせ方教えてやるから」