crocus
メイド服のスカートをクシャクシャに握り、下唇を噛み締めて、目を伏せている若葉ちゃんは申し訳なさそうな顔をしている。
その様子を見ていると強張っていた身体の力がスーっと抜けていく。
若葉ちゃんの言う通りだ。
このまま翔や祥と向き合わないまま過ごしても、いつかまたどこかで出会うかもしれない。
そんな時、本当は自分がどうしたいかなんて答えはすぐに出る。
背を向けて逃げるんじゃなくて、そんなこともあったねと、一緒に過去を懐かしみながら笑い合いたい。
もっと言えば、ボクが逃げ出したいほど辛い思いをしていると知れば、今みたいに胸を痛めてくれる子がいるのなら、その優しすぎる子のために強くなりたい。
ううん、強くなれる。
誠吾は若葉ちゃんから目を離して、真っ直ぐに1歩踏み出した。