crocus
そんなことを考えていた恵介が、自分の指を見てギョッとした。巻かれた包帯の分厚さは、大袈裟なくらい重傷感が出ている。
「ちょ、ちょっとこれはやりすぎじゃ…」
「いいえ!そんなことありません!あんなに美味しい料理を作る橘さんのこの手は、クロッカスの宝ですから!」
「そ、そう…」
怒られてしまった。やはり年下の女の子に。
ついさっきまで女性嫌いになった理由の1つである、憎んでいた女性と突然再会し、頭からつま先まで殺気立っていたのが信じられないくらいに、拍子抜けした空気が流れる。
もっと信じられないのは、悪くないと思っている自分自身だ。