crocus
「わっかっばっちゃぁん!」
満面の笑みで両手を広げて走り寄る上矢さんに抱きつかれそうになる寸前に、オーナーのしなやかな蹴りが入りその場でへたりと倒れた。
「散れっ!……ていうかあんた達。定休日だからってダラダラしてんじゃないわよ!ったく……」
一つため息をつくとオーナーさんは大声で宣言した。
「ま、知り合いなら話は早いわね。この子は今日からうちの新しい住人兼従業員!可愛いからって手を出したら、即刻沈めるから!」
背後から響いたその言葉に店員さん達はもちろん若葉も驚き、全員の視線はオーナーさんに釘付けだ。
「ってことで、恵介!誠吾!恭平!ひとつ物置に使ってる部屋があったわよね?あそこ片付けて。それから要と琢磨は資金は渡すから必要最低限の家具をそろえて頂戴!以上!」
急な展開に動揺を隠せないのと同時に、せっかくの休日を自分のことで割かせてしまう罪悪感に苛まれる。
「さ!私と若葉ちゃんは洋服や書類を揃えましょうね。その後は、カフェでゆっくりしましょう」
「え?え?」
店員さん達の諦め顔と、オーナーさんの鉄壁の笑顔を交互に見ながら、ぐいぐいと手を引かれるままにリビングを後にした。