crocus

「若葉姉ちゃんから手紙預かってるから、俺が代わりに読むぞ?」

女の子が頷くのを見た琢磨は両手に手紙を持って、言葉にしながら、目で文字を追いかけた。

「結衣ちゃんへ。まずは直接渡せなくて、ごめんなさい。ブーケの材料は生花も考えたけれど、今回は造花にしてみました。これなら、いつまでも結衣ちゃんの優しい気持ちが形として残ると思ったからです。きっとご両親も喜ぶはずだから、ブーケ作り頑張ってね。花の花言葉表も作ったので参考にしてください。

 お姉ちゃんも大切な約束のために、逃げずに向き合って戦って来るね」

琢磨は読み終えると、花言葉が書いているという小さなメモを渡していた。

造花や包装紙を他人の結婚記念日のために余るほど集めるなんて、雪村さんの筋金入りのお人好しに何故かイライラが込み上げる。
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