crocus
何も言わないスーツの集団の背後から、リリンとドアベルの音と共にまた黒いスーツを着用した男が入って来た。笑いを張り付けているのか、元から目が細いのかよく分からない胡散臭げな表情だ。
「準備中のようでしたので、お邪魔しますね。私、大島グループで土地開発部に所属しております、田辺と申します」
大島グループという名前には聞き覚えがあった。確か数年前から何かとニュースや新聞に取り上げられては賑わせている話題の会社だ。有数の株を所有し、土地開発を筆頭に、レジャー事業、不動産事業、エネルギー事業、ホテル事業とあらゆる事業を展開し、最近では海外進出も果たしている、衰えを知らないモンスター企業だ。
今まではその傘下の子会社が話し合いの場を設けてはいたが、ついに親玉の登場という訳だ。
「ついに来ましたね」
商店街の安息を脅かす敵が、まさか大島グループだなんて知らなかったけれど、要のこの口振り。初めから気づいていたんだろう。
「あなたがここの代表者ですか?…いやぁ、随分とお若い」