crocus
要の声で我に返り、走り出した彼女の手を取り、エレベーターで地下駐車場へと降りた。
来たときは1人分だった足音が、今は2人分になってコンクリートが音叉になって響き渡る。
恵介が待つ車を見つけ、後部座席に雪村さんを乗せた。
「え!?雪村さん?なんでここに…え、え、え!!?」
状況が分からない恵介には、さぞかし驚いているだろう。しかし、要自身も助手席に乗り込もうとしたその時、信じられない人物を見つけた。
その人はこちらに気づくことなく車に乗り込み、エンジン音を轟かせて発進した。
要は素早く助手席に飛び乗り、混乱している恵介に指示を出した。
「今出ていく、あの車をハイヤーを追ってくれ!!最速スピードでなんとしても離されることなく、親切丁寧な運転を心がけろ!!」
「どっちだよ!…って僕、ツッコミ担当じゃないんだけどな」